転舵回避の汎用的解法
過去の記事では転舵回避の変位についてクロソイド曲線のフレネル積分を利用して導出したが, 今回は変位の時間に関するべき展開を仮定して同様の問題を解く. この解法は前回のそれよりも汎用性が高く, 減速転舵などのさらに複雑な挙動を示す回避まで適用範囲を広げうる可能性がある.
前回の記事:
warabi99-wows.hatenablog.com
艦艇の速力を , 旋回半径を , 転舵時間を とおく.
艦艇の速度ベクトルを とすれば, 旋回度 をもとに以下の式が成り立つ.
ただし旋回度 とは時間あたり速度ベクトルの角度変化であり,
として表される.舵が切れていくのに対応して, 旋回度は時間の一次関数になる.
(1)式を変形して, についての時間微分を導く.
ここで, 速度ベクトル が以下のように時間 のべき級数で表せると仮定する.
とは2つの成分を持つベクトルであり, それぞれが , の に関して 次の係数に対応する.(3)式の時間微分を考えて, ここから係数 を導く手がかりを得る.
以下のように, が時間 に関する1次式 と速度ベクトル の積で表される場合を考える.
(3), (4)および(5)式から係数 の漸化式を得る.上式を の次数ごとに整理して, なる についてを得る.まず初期条件を とすれば, (3)式から がそのまま得られる.
また(2)式をみれば であるから, (4)式よりである.これらの初期条件と および(6)式から, なる について以下の展開を得る. ただし, は が偶数の項しか値を持たない.
(7)式から, の展開は以下のように求まる.
これらを時間で積分すれば, 過去稿と同様の結果が得られる.