わらび餅の巡洋艦日記

おふねの戦術論と性能論についての記事です.

高Tier巡洋艦の主砲を概観する 総論編

1. はじめに

 私が砲弾性能を調べ始めた動機は, 未実装艦艇の性能予想でした. 4年ほど前にとある方が架空艦コンペなるイベントを定期的に開催してくれていて, 私は発表のネタを練るために巡洋艦の主砲性能を片っ端から調べていました. 当時はまだ実装されていなかった超甲巡, 英重巡も題材に挙がった記憶があります.

 このようなケースは珍しいもので, 主砲性能の知識を実戦に活用したいという実用上の観点から興味を持たれる方がほとんどでしょう. この記事を読んだからといって魔法のように性能を覚えられるわけではありませんが, 少なくとも退屈なデータ集めに時間を使わずに済みます. 着弾時間やAP貫通力など, 弾道計算が必要な砲弾性能をこれほどの規模でまとめた記事は珍しいのではないかと思います.

 この記事ではTier8以上の巡洋艦が搭載する主砲を網羅して, 性能の解説を行います. 巡洋艦のツリーそのものの解説は省略しますが, マイナーな艦艇, とりわけツリー外の艦艇については国籍やTierについて括弧書きを加えるつもりです.

 この記事は3部構成です. まず総論として巡洋艦主砲を口径による分類と, 砲弾性能のおおまかな傾向を把握します. 各論では口径およびTierごとに, さらに詳細な性能について紹介します. 補遺として弾道計算の方法や弾道の隠しパラメーター, 砲弾ダメージの回帰計算についても補足する予定です.

 最初に解説文を読むのではなく, 各節の冒頭にある数表や解説図を見てもらうのがよいと思います. 細かい数字を暗記するのではなく, 大まかな傾向を掴みましょう. 性能は攻撃性能と防御性能の噛み合わせで決まるので, 例えばHE貫通力であれば戦艦や巡洋艦の表面装甲, AP貫通力であれば同格巡洋艦の舷側装甲と比べるのが合理的です. また, DPM(分間ダメージ)はダメージレースで競合する同格巡洋艦のDPMが比較対象になります.

 前置きはこのくらいにして, 高Tier巡洋艦の主砲一覧を置いておきます. この記事の存在意義の半分以上はこの表そのものにあります. さすがに項目が多すぎて目が回ると思うので, そのためにこれから数回に分けて解説していきます.

表 1. 高Tier巡搭載砲の一覧

2. 口径に関連するゲームシステム

 この記事では, 主砲を口径に応じて分類しますが, その根拠は口径に関連したゲームシステムにあります. 以下5つの項目について解説します.

表 2. 口径に関連するゲームシステム

2.1. 高Tier巡洋艦の船体表面

表 3. 高Tier巡洋艦の船体表面

 巡洋艦の船体表面は搭載砲の口径に従って決まります. 主砲の話なのに最初に防御の話から入るのは違和感があるかもしれませんが, 次節のHE貫通力の話にさっそく関連するのでとっても重要です.

 軽巡重巡の船体は最低25mmが保証されており両者の差は舷側上部だけ, そして駆逐砲巡は艦末端も中央も明らかに低いと覚えておけば大丈夫です. さらに重要な例外としてソ重巡の中央50mmを抑えておけば十分です. 国籍によって異なるものの, 日本以外の大巡には艦中央の表面になにかしらの優遇があります.

2.2. HE貫通力

 HEの貫通力は口径の1/6を四捨五入した値になり, 貫通力が装甲厚と等しいか上回れば貫通します. 優遇の1/4ルールは独巡, 英234mm砲に適用されます. 英重巡203mm砲は通常の1/6ルールに従うので注意してください. また, 独巡と共通の主砲を搭載する蘭巡には通常の1/6ルールが適用されます.

 軽巡砲には1/6ではなく1/5ルールが適用されますが, これはTier10巡表面30mmの貫通を保証するシステムとして理解するとよいでしょう. 対照的に, 駆逐砲は保証を受けません.

 高Tier戦艦の船体表面最低値である32mmを貫通可能になるのは重巡砲以上であり, 軽巡砲以下が貫通弾を出すためには艦長スキルの榴弾用慣性信管(IFHE)が必要になります. ただし, Mainz(Tier8独巡)が搭載する独150mm砲は1/4ルールの優遇のため32mmを貫通可能です.

 ソ重巡と独戦の表面50mmがもうひとつの目安で, 大巡砲のほかに独203mm砲, 英234mm砲が貫通可能です.

2.3. AP跳弾無視

 口径の1/14.3を下回る装甲に対してはAPの跳弾が発生しないため, 敵艦の姿勢に関係なく貫通弾を与えることができます. 超重巡砲は16mm, 大巡砲は19mm以下に跳弾無視が発生します. 駆逐砲巡および英軽巡が標的の場合に重要で, Henri IV(口径240mm)のAPがMinotaur(英軽巡Tier10)の天敵という話は聞いたことがあるかもしれません.

2.4. 駆逐10%ダメージ

 口径283mm(大巡)以上のAP弾は, 駆逐に対して貫通弾1発のダメージが最大ダメージの10%でキャップされます. 大巡砲に適用される冷遇です.

2.5. 艦長スキル

 主砲口径に応じて効果が変化する艦長スキルが2種類あります.

榴弾: HEおよびSAPのダメージ+10%だが, 口径149mm(軽巡砲)以上で被発見+10%のペナルティー.
徹甲弾: 口径190mm(重巡砲)以上ならば, APダメージ+5%.

3. 口径ごとの基本性能

3.1. 口径ごとの標準的な性能

 米艦艇の搭載砲には通常仕様が適用されているため, 口径に応じた砲弾性能の基準として活用できます.

表 4. アメリ巡洋艦搭載砲の性能

3.2. HEダメージ

 口径で決まり, 砲弾重量の影響はほとんどありません. ただし, 同じ口径ならば砲弾が重いほどダメージが大きくなる傾向はあります. 優遇は日巡および英重巡の一部, 冷遇は独巡です. 英重巡については後ほど別の節で詳しく解説します.

 HEダメージの暫定的な予測式を貼っておきます. いずれ戦艦砲, 駆逐砲も含めた傾向を探ってみるつもりです. もし実装済みの主砲のなかで同じ口径のものがある場合は, そちらを参考に決めたほうがおそらく正確です.

3.3. HE火災率

 口径に応じて決まりますが, 例外があまりにも多いので各論で解説します. 優遇は日巡と英重巡の一部, 冷遇は独巡, ソ巡第2ツリー, 蘭巡です. HEダメージの優遇・冷遇と共通する部分も多くあります.

 未実装砲の火災率を決める際には, 類似した口径から推測するのが合理的だと思います.

3.4. APダメージ

 砲弾重量と初速で厳格に決定されます. 優遇は独巡のみです.

 巡洋艦の例ではないものの, かつてKremlin (Tier10ソ戦)のAPダメージが弱体化を受けた際に砲弾重量も低下していることが確認されています. 砲弾重量および初速とAPダメージの整合性はかなり高いようです.

表 5. KremlinのAP性能 (nerf前後)

 巡洋艦主砲のAPダメージの予測式を貼っておきます. こちらはわりと信用できると考えていますが, いずれ戦艦砲も含めて傾向を探ってみる予定ではあります.

3.5. 弾道性能(AP貫通力, 着弾時間)

 AP貫通力や着弾時間といった弾道性能を決めるパラメーターには公開のものと非公開のものがあり, 前者は口径, 初速, 砲弾重量, 後者は抗力係数, Krupp値が該当します.

 着弾時間は初速の影響を大きく受け, そして砲弾重量(厳密には砲弾断面積あたり重量)が大きいほど砲弾は飛翔中に減速しづらくなります. AP貫通力は着弾時の弾速と砲弾重量(これもまた厳密には砲弾断面積あたり重量)で決まるため, 2つの弾道性能を改善するには主砲口径を拡大するか, 砲身を伸ばすかしかありません. 口径と口径長を変えない限りは, 砲弾重量と初速のトレードオフから逃れることはできません. 砲身長に関して, 巡洋艦砲では50-55口径, 戦艦砲では45-50口径が一般的です.

 しかしながら現実の砲には物理的な制約がかかります. 例えば日本45口径46cm3連装砲を製造するためのインゴットは当時の日本の金属加工技術で限界ギリギリのサイズでした. また, 当然ながら長砲身ほど砲塔重量がかさむため, 排水量とコストの増加につながります.

 砲弾の発射に使用する火薬量を増加させれば初速も改善しますが, 砲身にかかる圧力も増加するため砲の内部に高い負荷がかかります. 耐えられなければ砲身破裂, 耐えたとしても砲身の摩耗がきわめて早く進行します. 実例として, 日本の長10cm砲は65口径の長砲身で1000m/sの高初速を達成した傑作砲ですが, 砲身命数(砲身交換が必要な発射回数)は12.7cm連装高角砲の半分以下に悪化しています. 発射時にかかる圧力は3,050 kg/cm2で, 12.7cm連装高角砲の2,500 kg/cm2 から大きく上昇しています. 巡洋艦砲に話を戻すと日本20.3cmでは3,130 kg/cm2, 最上砲(15.5cm)に至っては3,400 kg/cm2にも及びます. 戦間期における工業力の着実な進歩を感じる数字です.

3.6. おまけ・英巡HEの狂った性能設定

図 1. 英巡主砲HEの経緯

 英巡でHEを射撃可能な砲は234mm砲, 203mm砲, そして152mm砲の3種類ありますが, そのうち後の2つに関しては砲弾重量, 初速, そして弾道性能が全く一致しているにも関わらずHEダメージの異なる2種類の主砲が存在します.

 英巡のなかで最初にHE弾を搭載したのは2015年4月に実装されたBelfast (Tier7)で, 火災率の冷遇が特徴でした. 1か月後に実装されたPerth (Tier6, 英連邦)もまったく同じ性能が設定されていました.

 その後しばらく空いて2019年2月に初の英重巡であるExeter (Tier5)が通常仕様の重巡砲HEとして実装され, このとき未実装である英重巡ツリーにもこの通常仕様が引き継がれるものと期待されました. しかし1年後の2020年2月に実装された英重巡ツリーは日巡並みのHE優遇を受けており, ここで英重巡砲のまったく同じ砲弾に2種類のHEダメージが存在する事態になりました. なお, ツリーと同時実装されたLondon (Tier6)は通常仕様, なぜか律儀にExeterの性格を引き継いでいます.

 2020年11月のBelfast’43 (Tier8)実装でついに英軽巡砲にも性能のダブルスタンダードが発生します. この砲は従来の軽巡砲から火災率の冷遇を引き継ぎつつ, 英重巡譲りのHEダメージ優遇も同時に受けるという奇妙な事態に陥っています.

 ゲームクライアント内には英軽巡ツリーに実装されるはずだったHE弾のデータが残っているようで, そちらでも英軽巡(非防空巡)のHEは2,100 (9%), Belfast砲と同じ性能が設定されています. また, 現在のバージョンではHEを射撃可能な艦艇が存在しない英防空巡152mm砲ですが, HEは2,200 (11%)と通常仕様に近いものになっています. この情報はじーふぉーさん(twitter: @G4H4CK256)に頂きました.

表 6. 未実装英軽巡HEの性能

 5年前に出ていた, Minotaurの性能リーク記事のリンクも貼っておきます. HE性能の記載があります.
thedailybounce.net

4. さいごに

 記述の誤りがあれば, twitter(@warabi99_wows)までお願いします.