わらび餅の巡洋艦日記

おふねの戦術論と性能論についての記事です.

火力・視界から探る艦種機能

0. 概要──交戦形態に裏付けられた艦種機能

 主砲照準などの技術的判断は1試合あたりの判断頻度が高いため、実戦経験を積むことで効率的に改善していく。一方で立ち回りなどの戦術的判断は判断回数が少ないため、実戦経験のみに頼って改善を図ることには限界がある。そこでこの記事では戦術的判断に関する概念を整備するために、4つの艦種の機能を火力と視界の両面から考察していく。

 前半では戦艦および巡洋艦の火力機能を扱う。交戦を3種類に分類してそれぞれの特徴を取り上げていくが、実戦では味方にとって有利になるような交戦形態を選択することが戦術的な目標につながる。1章ではAPが関与しない交戦から遠隔戦接近戦を導く。2章ではAP射線の性質を導入して新たに挟撃の概念を立てる。3章では交戦の広域性・局所性をもとに位置的優位の起源を探る。

 後半では駆逐艦および空母の視界機能を主に扱う。視界機能の強弱は交戦形態を左右する最も重要な要因である。4章では視界機能の制限性という観点から駆逐艦と空母の差異を確認したのち、5章では駆逐の火力・視界・占領機能と対駆逐攻撃を扱う。6章では空母の火力が戦場に及ぼす影響力について、交戦の広域性・局所性を応用して考察する。

図 1. 交戦形態の3類型

1. 遠隔戦・接近戦──距離的な二元論

 まずAP射線の角度依存性が寄与しない大型艦(戦艦・巡洋艦)の砲戦について、交戦距離が隠蔽距離よりも遠いか近いかに応じて交戦形態を遠隔戦接近戦に分類する。

 遠隔戦の生起条件は①外部視界役の存在視線・射線の透明性余裕のある点数状況の3条件がすべて満たされることである。遠隔戦の性能的根拠は交戦距離の優越による一方的攻撃である。島越し射撃や煙幕射撃の島裏策も一方的攻撃を可能にするが、接近戦との相互移行が容易である点で本来の遠隔戦とは異なる。

 接近戦の生起条件は遠隔戦の3条件いずれかの否定である。接近戦の攻撃手段は、交戦距離の長いほうから主砲、副砲、肉薄雷撃、体当たりの順に並ぶ。自分にとって有利な攻撃手段を選択して投射量の優越を得るためには接近戦の交戦距離管理が必要になる。

 接近戦を行う大型艦が視界役を兼任することも可能であり、この場合接近視界の遠隔戦が生起する。接近視界の遠隔戦は接近戦でありながら遠隔の射線を要求する。この場合、接近戦は遠隔戦条件①③いずれかの否定によって生起することになる。

2. 挟撃──AP射線の機能

 AP射線の存在下では艦艇の奥転舵が抑止されるため、前向きの艦艇が交戦距離のコントロールを失うコミットが起こる。ここから引き撃ちの必要性を導ける。また、砲戦舷の保存と組み合わせれば射界外への動きの根拠となる。これらは1章の一次元的交戦を小規模に修正したものである。

 複数のAP射線に角度差をつけて敵の側面を強制的に捉えることができる挟撃は、遠隔戦・接近戦に大きな修正を迫る。挟撃のためには挟撃の位置につく戦艦に関して①襲撃・潜伏時の隠密性・安全性決定機における横射線の開通決定機における被挟撃の回避という3条件が満たされる必要がある。

 戦艦は挟撃の脅威を敵に与えるために延翼運動を行うが、これは有効射程の限界または横射線の遮断のいずれかに起因してAP射線の集中が不可能になるまで継続する。挟撃の脅威のもとでは敵挟撃艦の行動を制約するために戦力配置を分散する必要が生まれる。

3. 交戦の広域性と局所性──位置的優位の起源

 視線と射線が無条件に通り有効射程の制限もないという理想的な遠隔戦において、艦艇の位置はその火力機能に影響を与えない。この広域的交戦は全艦艇が参加する消耗戦に陥る。火力差が撃沈を通じて隻数差に結びつき、隻数差が火力差の拡大を招くという正のフィードバックが働くことで、試合の逆転は困難になる。

 位置的優位が火力機能に影響を与える局所的交戦は、戦場に不確実性と逆転可能性をもたらす。位置的優位の起源は挟撃の脅威が招く戦力配置の分散、接近戦における遠隔射線の遮断と激烈なダメージ速度が招く移動の凍結にある。

 ただし接近戦でありながら遠距離射線が遮断されず、かつ交戦が緩慢な場合には接近視界の遠隔戦が生起する。この場合は遠隔戦に準じた広域的交戦が起こりうる。

4. 視界機能──視界の制限性

 遠隔戦の視界・視線条件①②を満たす能力に基づいて視界機能を評価する。地形による視線の遮断の影響、移動速度、耐久性といった観点から駆逐視界は制約を受けるのに対して、航空視界は制約を受けない。駆逐視界は制限視界であり、空母の航空視界は無制限視界である。

 無制限視界である航空視界の影響下では、駆逐艦隠蔽距離ではなく安全距離に従って位置取りを決める必要がある。

5. 駆逐艦機能──隠蔽雷撃と対駆逐攻撃

 駆逐艦の性能的根拠は大型艦よりも圧倒的に優秀な隠蔽距離である。駆逐艦隠蔽雷撃は同一の艦艇が視界機能と火力機能を兼任する真の一方的攻撃であり、駆逐艦の機能のなかでも重要な役割を果たす。

 占領の利益は①敵が陣地を踏む最短時間までに稼ぐポイント敵に前進を強いることによるダメージ収支改善、この2点で構成される。敵に前進を強いてもダメージ収支が改善しない場合、占領から得られる利益は①に限られる。

 駆逐艦が姿を晒して行う相互的な砲戦は接近戦に準じた特徴を持つ。遠隔の射線が容易に通れば接近視界の遠隔戦が生起して、駆逐艦への援護が容易であるから数的優位が機能する。反対に遠隔の射線が遮断されていれば純粋な接近戦が生起して、駆逐艦への援護が困難なため性能的優位である投射量の優越が勝敗を決める。

 駆逐艦が島や煙幕などの島裏策を駆使して行う一方的砲戦は視界の手段に応じて、駆逐艦自身がソナーやレーダーを用いて敵艦をスポットする自己完結的視界と、味方艦のスポットに依存する外部視界に分類できる。自己完結的視界の砲戦は隠蔽雷撃に次ぐ真の一方的攻撃である。大型艦視界の砲戦は遠隔戦に準じるが、視界機能を大型艦や空母が担い、火力機能を駆逐艦が担う変則的なものである。

 レーダー巡洋艦による対駆逐攻撃の交戦距離は大型艦の遠隔戦よりも短く、駆逐艦の砲戦よりも長い。接近戦の交戦距離管理をもとにすれば、大型艦の遠隔戦の影響を避けつつ敵駆逐艦へ射線を通す必要がある。

6. 航空火力──地形無視の攻撃

 航空火力による地形無視の攻撃は、地形による射線の遮断を条件に持つ接近戦および挟撃の影響力を低下させる。島裏策に関しても、航空攻撃のもとでは安全性が格段に低下する。

 さらに対空能力は複数艦艇の配置が集中することで高まるが、逆をいえば単独行動の艦艇は航空攻撃に極めて脆弱になる。航空火力のもとでは挟撃を試行する際のリスクが上昇するため、交戦の局所性はやはり低下する。

 航空火力の存在下では戦場における広域性と局所性のバランスが崩れて広域性のほうへ大きく傾くことで、遠隔戦を背景とした消耗戦が支配的になる。

謝辞

 執筆にあたって、りばっくすさん(@RiBacx366)、珊瑚さん(@Coralsea017)、じーふぉーさん(@G4H4CK256)に助言をいただきました。ありがとうございました。