外周の用法
- 1. 外周に出るべき条件とは?
- 2. 隠蔽占領と火力占領
- 3. 内外周の機能
- 4. 内外周の用法
- 5. 実戦譜
- 6. 後記
1. 外周に出るべき条件とは?
“適切な位置取り”は立ち回りの根幹をなす技術であるにもかかわらず、その判断の正誤を実戦の経験のみから判定することは困難である。そこで、前回の「突撃の条件」に続いて、この記事では戦場の横方向の位置取りについての判断基準を考える。「外周の用法」と題しているものの、まずは内周の機能に深く関わってくる陣地占領から議論を始めたい。「外周に出るべき条件」に先立って、「外周に出るべきでない条件」をはっきりさせておく。
2章では陣地占領を主題に据える。大型艦の火力差が大きな状況では、火力優勢側の大型艦が陣地内に進出する火力占領が起こる。その一方で、火力差が小さく劣勢側が優勢側の進出を阻止できる状況では、小型艦による隠蔽占領が重要な役割を果たす。隠蔽占領の場合であっても、敵大型艦の進出を阻止できる最低限度の火力が必要なことを強調する。
3章では内周と外周の機能をそれぞれ陣地占領、挟撃と対応づけながら論じる。制圧戦の攻防は陣地占領をめぐる内周の攻防が中心で、外周は内周を攻略するための手段として機能する。
4章ではいよいよ「外周および内周を使うべき局面とは?」という実戦の疑問に答えるために、艦艇の4種類の役割ごとに内外周の判断基準を具体化する。ランダム戦の戦闘形式に応じた判断基準の修正も解説する。
5章では実戦譜を紹介しながら、ここまでの原則を実戦の判断に応用する。
2. 隠蔽占領と火力占領
2.1. 前線の膠着が隠蔽占領を可能にする
陣地占領という言葉から最初に思い浮かべるのは、駆逐艦などの小型艦が陣地内に進入して隠蔽状態で占領を行う隠蔽占領である。一方で、大型艦が陣地になだれ込んで敵を押し下げながら行う火力占領もある。両者のうちどちらが起こるかは、どのような条件で決まるのだろうか。大型艦が突進すれば小型艦の隠蔽を剥がせるわけで、大型艦が陣地内へ進出可能な局面では隠蔽占領は不可能である。したがって、隠蔽占領が起こるためには両方の陣営の大型艦が同時に進出不可能とならなければならない。このとき火力優位の陣営であっても進出不可能ということは、撤退側が進出側よりも有利になる要因が存在することを示している。
それでは、撤退側の優位は何に起因するのか。まず、撤退側は進出側の動線側面へ容易に回り込めるため側射を狙いやすい。さらに、味方がいた海域に下がりながら戦う撤退側は、交戦海域の地形や艦艇の配置に関する情報を多く持っている。撤退側は側射のチャンスと情報において優位に立っている。
2.2. 膠着維持か前線打開か
もう一度占領の話に立ち戻ると、隠蔽占領では撤退側の優位を利用して大型艦の前線を膠着させながら小型艦の占領能力で敵を上回ることが重要である。対する火力占領では、前線の膠着を打開するために十分な程度の火力優勢を目指すことになる。重要なのは、隠蔽占領であっても前線を膠着させる程度の大型艦の火力がやはり必要であるということである。
3. 内外周の機能
3.1. 外周の定義
1章で述べたように、外周へ開くという行為には陣地占領ならびに挟撃という複数の意義がある。以降の議論では、外周へ開くという行為を「陣地占領の必要性を超えて、挟撃のみのために戦場外側へ開く」行為として定義したい。そこで、外周と内周の境界線を「外周陣地の外側1/3」に設定する。この定義の外周はおそらく一般的な認識よりもかなり狭くなる。
ここからはランダム戦の約半数を占める制圧戦を想定して話を進める。
3.2. 内周の占領的機能
制圧戦は陣地を取らないと勝てないため、その攻防の要点は内周にある。制圧戦の大目標は「敵を味方内周へ進出させないこと」、「味方を敵内周に進出させること」である。内周の機能は3種類あり、①占領の経路②占領妨害の拠点③サイドチェンジ、以上を順に説明する。
占領の経路
内周は外周陣地と中央陣地をつなぐ位置にあり、占領艦が陣地占領を試みる際の重要な移動経路となる。内周の安全を確保することで味方占領艦の行動能力を高めれば味方の占領ペースが上がっていき、反対に敵の内周を脅かすことで敵占領艦の行動能力を奪えばそれだけ敵の占領ペースが遅れていく。
占領妨害の拠点
内周は外周陣地と中央陣地の中間に位置する海域であるため、ここを押さえれば複数の陣地の占領を妨害できる。例えばレーダー艦が内周で行動の自由を得た場合、外周・中央の両陣地を敵の占領から守ることができるようになる。外周レーンが外周陣地にしか影響力を与えられないことと比較すれば、内周レーンの強みがよく分かる。
サイドチェンジ
内周レーンは反対サイドの内周に比較的近いため、サイドチェンジに時間がかからない。例えば反対サイドの内周が敵に突破されそうな状況では、前もって内周に位置取ることで増援へ素早く向かうことができる。
3.3. 外周の挟撃的機能
挟撃を根拠とした外周の機能は火力占領のみならず、隠蔽占領の前提である前線の膠着を実現するためにも重要である。先に外周の攻撃的機能である①外周進出、続いて防御的機能である②迂回の強制③射界外侵入について解説する。
ここでいう挟撃には、敵動線の側面からAP弾で攻撃を加えるという狭い意味だけでなく、戦場中央へ砲戦舷を向ける敵艦を逆側から攻撃するという広い意味も加えている。外周の機能のうち①②が狭義、③が広義の挟撃に対応している。
外周進出
両側を敵に接する可能性のある内周と異なり、マップ端にある外周は片側のみを敵に接する。そのため挟撃を受けづらく、低リスクで進出を試みることができる。ただし、ここで進出側の本当の目的は敵内周への進出にあることを忘れてはいけない。幸先よく外周を突破しても、そこから内周へ進出する段階で困難に直面することが少なくない。
外周進出の例としては勝勢試合終盤で残敵の掃討に移る局面があり、このとき外周に開いてから進出すると安全に稼ぎを増やせる。
迂回の強制
撤退側の戦艦が外周に開くと、進出側は側射を避けるために外周への迂回を強いられる。進出側が1隻でも強引に内周を突破しようとすると側面を撃ち抜かれるため、これを避けるために撤退側の戦艦が単独であったとしても進出側は複数隻が外周へ釘付けされることになる。
射界外侵入
外周への進出に成功した敵艦は、続いて内周への進出を目指す。このとき敵の砲戦舷は内側を向くため、その反対側となる外周には射線が向きづらい。敵の射界外となる外周に位置を取ることで、比較的安全に攻撃できる。
3.4. 内外周の連携:突撃抑止
この章の最後に、内外周の連携による突撃抑止を説明する。内周のみでは実現できない機能という点では、前節の挟撃的機能と共通している。
接近突撃およびレーダー突撃の機をうかがう敵はこちらの射線が届かない海域を突撃経路に選ぶため、その突撃を抑止するためには戦艦および巡洋艦の射線を敵陣へくまなく通すことが必要である。大型艦がお互いに距離を取りながら分散することで射線の角度が変わり、地形に遮られて射線の届かない海域を狭めることができる。したがって、突撃抑止のためには内外周の連携が鍵になる。マップの地形によってはすべての突撃経路を塞ぐことが困難なこともあるが、その場合でも無理のない範囲で敵の行動に制限をかけるようにする。
3.5. 内外周の機能まとめ
目標:内周の攻防
敵を味方内周に進出させないこと
味方を敵内周に進出させること
内周の機能
【占領の経路】占領艦が陣地間を移動する経路になること
【占領妨害の拠点】複数の陣地の占領を妨害すること
【サイドチェンジ】反対サイドの内周へ転換すること
外周の機能
【外周進出】敵外周へ進出して、敵内周に横方向から脅威を与えること
【迂回の強制】敵の外周進出を阻止して、味方内周の安全を維持すること
【射界外侵入】敵の砲戦舷の逆側から安全に攻撃すること
内外周の連携機能
【突撃抑止】敵の突撃を未然に防ぐこと
4. 内外周の用法
4.1. 艦艇の4つの役割
内周および外周の機能はそれぞれ陣地占領と挟撃・突撃抑止に由来している。したがって、艦艇の役割をこれらの観点から分類しておくと便利である。占領関連機能は「占領役」と「占領妨害役」、そして火力機能のうちAP射線などによる挟撃が可能な艦艇は「挟撃役」、HEメインで与ダメージが敵姿勢に依存しない艦艇は「(狭義の)火力役」と呼ぶことにする。
4.2. 占領役の用法:陣地間を動き回る
占領役には主に駆逐艦が該当して、その役割は「前線膠着時に占領可能な中立陣地・敵陣地を迅速に確保すること」である。内周の機能①「占領の経路」との関連が深く、内周を移動経路として陣地間を動き回る立ち回りが中心になる。
占領役を放棄する2つの状況
占領役を放棄する理由は主に2つある。敵の占領妨害役が強い状況では、占領に先立って敵妨害役を排除する必要がある。また、前線が打開されて敵大型艦が陣地内へ進出してきた状況でも、占領役はもはや陣地を狙うことはできない。これらの状況では占領役を一旦棚上げして、火力役あるいは挟撃役として敵の占領妨害役や大型艦の排除に動くのがよい。
敵に容易に再占領される状況
敵の再占領が容易に起こる状況、つまり敵占領役の占領能力が高いうえに味方占領妨害役の影響力が低い場合には、現在の占領の価値が低下する。例えば初動占領の価値が低くなる根拠もこの再占領可能性にある。占領争いの最終的な勝敗を決めるのは、敵の占領役や占領妨害役が能力を失ったときに味方占領艦の行動能力が残っているかどうかである。
4.3. 占領妨害役の用法:敵占領艦ある限り内周を離れず
占領妨害役には主にレーダー巡洋艦が該当して、その役割は「前線膠着時かつ敵占領役の存在下で中立陣地および味方陣地を防衛、ならびに味方の占領試行陣地を援護すること」である。内周の機能②「占領妨害の拠点」との関連が深く、陣地との距離を敵占領役と同等以下に保ちながら内周に居座るような立ち回りになる。駆逐艦が占領妨害役を務めることもできるが、そのぶん占領役の枚数が減ることになる。そのため、レーダー艦は敵占領役の存在下で迂闊に陣地を空けないように注意したい。
敵占領役への突撃
占領妨害役には占領妨害という受動的な役割だけではなく、突撃によって敵占領艦の占領能力を直接奪うという能動的な役割も課されている。その成功のために駆逐艦の接近突撃は接近戦で撃ち勝てる状況を作り出すこと、レーダー巡洋艦のレーダー突撃は敵戦艦の射線を遮断することが鍵である。
敵占領役の全滅・不在
敵占領艦が全滅、あるいは陣地から遠く離れているような状況では占領妨害役は不要になる。このような状況が生じるのは占領妨害役が役割を全うしたからに他ならない。
味方が容易に再占領できる状況
敵に占領された陣地の再占領が容易な状況、つまり味方占領役が健在で敵占領妨害役が弱い状況では、占領妨害役の重要度が下がる。このような状況は序盤に起こりやすい。
4.4. 挟撃役の用法:外周進出と内周突撃阻止の両立
挟撃役は主に戦艦が該当して、その役割は「敵大型艦の外側から敵の進出を制約すること」、「敵の突撃を抑止すること」の複数にわたる。前者は外周の機能①「外周進出」と②「迂回の強制」を根拠として、敵大型艦よりも外側の位置を占めることで達成できる。その一方で、後者の「突撃抑止」は単純に外へ開けばよいというものではない。遠い外周へ開くことで内周への射線が切れてしまえば、内周の突撃抑止は実現できない。
同一サイドに複数の挟撃役
同一サイドに挟撃役が複数ある状況では、それぞれが外周と内周に散らばればよい。内周側にいる挟撃役は状況次第で反対サイドに回ることもできるため(内周機能③「サイドチェンジ」)、味方の可動性を高める効果もある。外周の挟撃役は対面外周の敵挟撃役と数的同数か+1の数的優位に留めて、過剰戦力にならないよう配慮する。
同一サイドに単独の挟撃役
挟撃艦が1隻のみしかない状況では、突撃抑止を他の火力役に任せて挟撃役は外周の機能を優先して占めるほうが望ましい。内周の突撃抑止が不十分な場合に限って、やむを得ず内周寄りに位置を取る。
敵に前線を打開された状況
たとえ火力劣勢下で敵大型艦に進出を許した状況でも、基本的に挟撃艦のうち1隻は内周に閉じることなく外周に留まる。砲戦に参加していない味方を使うために、外周を横にではなく縦に引き下げることはあり得る。また、外周が狭いマップでは撤退時に内周まで下がらざるを得ない場合もある。
最も重要な例外は外周に留まると敵の突撃を受けてしまう状況で、これは突撃を阻止できる程度の援護が得られる位置まで撤退するしかない。
敵挟撃艦が内側に閉じた状況
敵大型艦が内側に収縮している状況では、挟撃艦がわざわざ外周まで開かなくても外周の機能を達成できることもある。外周を取ることが目的ではなく、あくまでも敵大型艦よりも外側の位置を占めることが目的である。このような状況は残存艦艇数の少ない中終盤に多いが、序盤であっても敵挟撃役が外周まで幅を取れておらず陣形が不良な場合に起こりうる。
4.5. 火力役の用法:火力役に制約なし
火力役は主に巡洋艦が該当するが、その立ち回りは外周の機能③「射界外侵入」という非常に弱い制約しか受けない。そもそもHE弾の特徴はダメージが敵の姿勢に依存しないことなので、乱暴な言い方をすれば射程内に敵を収めてさえいれば立ち位置などあってないようなものである。火力役を扱う際は、味方を撃っている敵を撃てさえすればよい。
「止まった敵をどかす」
位置取りの注意点を強いて挙げれば、HE弾の利点が最大限発揮されるのは「止まった敵をどかす」状況である。陣地近くの島裏に張り付いた敵レーダー艦、押し上げ態勢に入った敵戦艦などをその場から動かすために主砲弾を放り投げる。
擬似妨害役
味方占領妨害役が敵占領役をスポットした状況では、内周にいる火力役が擬似的な占領妨害役としても機能する。もしこのような状況にありながら敵大型艦が擬似妨害役の行動を制約できない場合は前線が下がりすぎているわけで、すでに前線の膠着が崩れかけて隠蔽占領と火力占領の中間のような状態にあると考えることもできる。
4.6. 戦闘形式・マップごとの修正
ランダム戦の戦闘形式は制圧戦が過半数を占め、通常戦も含めれば全体の7~8割をカバーできる。そのため、この節では制圧戦と通常戦のみを取り上げる。
制圧戦:外周と内周の幅
制圧戦は3陣地制と4陣地制のどちらにも共通する観点として、「外周の幅」と「内周の幅」が戦闘の方向性を決める。
外周の幅:広ければ遠い外周から、狭ければ内周から攻める
幅が7 km以上の広い外周は挟撃に十分な角度がつくため突破に使いやすく、複数の挟撃艦が陣形の幅を取るために遠い外周まで展開することも珍しくない。反対に7 km未満の狭い外周の突破を狙う場合は、内周または中央に展開した味方が敵内周へ射線を通しながら協調して前進すると効果的である。この狭い外周に複数の挟撃艦を投入すると敵内周への攻撃力がかえって弱まる。
内周の幅:広い内周では外周寄り・中央寄りを使い分ける
Tier10は有効射程20 kmの大型艦が14 km程度の距離で対峙するため、横方向の有効射程は両側14 km、片側7 kmが目安となる。7 kmを1レーンとみなして、3レーン21 kmが内周の幅の基準値である。この数字を超える広い内周は外周陣地と中央陣地の両方に射線を通すことが難しくなるため内周の「占領妨害の拠点」機能が弱まり、反対サイド内周までの移動にも時間がかかるため「サイドチェンジ」機能も弱まる。このようなマップではどちらの陣地を重点的にカバーするかに応じて外周寄り、中央寄りの位置取りを使い分けるとよい。
内周の幅が特徴的なマップをいくつか挙げれば、「大海原」が21 kmでちょうど標準的な値である。「戦士の道」は30 km、マップが斜め向きの「罠」は35 kmで非常に広い一方で、4陣地制の「安息の地」は12 kmと極めて狭い。
通常戦:内周占領機能の消滅
通常戦は敵味方の中間地点に配置された陣地がないため、内周の機能「占領の経路」および「占領妨害の拠点」が消滅する。小型艦の裏取り陣地占領の経路となる戦場中央を遮断する必要はあるが、通常戦において内周はその程度の機能しかない。
5. 実戦譜
5.1. 挟撃役の外周過剰
味方DruidがA占領を完了したところで、反対サイドのC側がすでに崩されている。制圧戦の要点は内周であるから、敵C側内周の進出を阻止できるかがこの試合の勝敗を決める。
A外周は戦艦2vs0と過剰戦力である。A外周から戦艦1隻が内周へ閉じて、味方KremlinとNevskyをB中央へ押し出すのが理想であった。敵占領役の駆逐艦2隻は遠い外周に開いており機能不全で、敵妨害役のWorcesterもC陣地にいるためBが手薄になっている。B陣地の争いを優位に進めればまだまだ互角の展開が望める。
実戦ではA外周から進出した味方SlavaとG.Kurfürstの攻めが遅く、支えきれなくなった味方右翼から敵PreussenとWorcesterのB進出を許して敗勢。敗因は敵のC内周進出を咎められなかったことにある。
5.2. 前線崩壊時の強引な隠蔽占領・煙幕巡洋艦の隠蔽占領
前局面でD側は敵Preussenを撃沈して火力優勢を確定させており、この局面では外周進出中に敵Shimakazeを捕捉して撃沈。敵Shimakazeは前線崩壊時に隠蔽占領を試みるべきではなく、隠蔽雷撃で大型艦を削りにいくかA占領に動くべきだった。
敵駆逐艦とレーダー艦が不在のA側では味方Napoliが排気煙幕で隠蔽占領を成功させ、占領ポイントを一時的に稼ぐことができた。戦艦の枚数では味方FDGが瀕死でほぼ1vs3の劣勢だが、味方Conquerorは近い外周に位置を取ることで敵戦艦からの射線を絞りつつ内周を牽制してAの膠着を維持した。
実戦ではこの後自艦Sevastopolが敵Petropavlovsk、Minotaurと2枚替えで精算、味方Minotaurががら空きのC陣地を占領した。A陣地は4分後に火力占領を許したが、味方ConquerorとNapoliは9分間にわたって敵のB進出を抑えながら耐えた。終局までBを踏ませることなく快勝、敵A側の戦艦3隻の働きを抑えたのが勝因である。
5.3. 挟撃役の転換
占領優勢と火力拮抗を維持しながら逃げ切り勝ちを目指す局面。敵戦艦2隻が外周を放棄したC側は敵の唯一の占領役であるF. Schultzを抑え込むだけでよく、C内周の占領妨害役に味方NeustrashimyとAlaskaを充てる。余剰の味方Amagiが反対サイドに転換する好判断でAB側の戦艦を4vs4の数的同数に保ち、これでとりあえずA側の火力拮抗を維持できた。味方が撃ち負けた場合にはさらにKearsargeをA側へ投入、反対にB後方の敵戦艦がC側に戻ってきた場合にはAmagiをCに再び転換すればよい。
A外周では狭い外周に閉じ込められた敵Lyonに対して味方が3vs1の局所数的優位を作った。自艦Schröderと味方Georgiaが敵内周のVladivostokから射線を切っているのが絶妙である。
実戦ではLyonの撃沈からAを火力占領した後、B周辺に集結した敵味方すべての大型艦による8vs6の砲戦を味方が無事に制して勝利した。
6. 後記
Nevskyの内周運用
昨年までのNevskyの立ち回りの模索期間を経て、ようやく運用が固まってきました。昨年上半期に試した外周運用が自分にはまったく合わなかった一方で、下半期から内周中心の立ち回りに変更すると目に見えて安定感が増しました。内外周の位置取りが勝敗に与える影響力の大きさには未だに驚いています。
大局観の戦術論
この記事では位置取りのなかでもスケールの大きな判断、距離にして10 km程度、時間にして3 分程度の判断に焦点を当てて扱いました。兵装や消耗品の使い方といったミクロな技術論をもとに戦術を解説した動画やブログは素晴らしいものが数多くありますが、ここではマクロな大局観、試合全体の流れから大まかな位置取りを決めていくという正反対のアプローチを採用してみました。技術論ベースの戦術論では解釈が難しいところにちょうど手が届くような内容になっていればいいなと思います。
ミニマップレンダラー
この大局的なアプローチの理由の一端は、私が昨年11月頃からミニマップレンダラーで実戦譜を蓄積しはじめたことにあります。リプレイをミニマップの動画に変換してくれる便利ツールで、公式Discord鯖などで利用できます。実戦譜の図を見てもらえば分かりやすいですが、ミニマップでは艦艇の細かい操作がすべて捨象されるので、自然と大局的な観点で試合を眺めるようになります。
勝敗決定局面から遡る
個人的な見方ですが、リプレイでは最初に勝敗を決定づけた局面を探します。勝ちパターンを「占領主導」「妨害主導」「撃沈主導」の3つに分けて、それぞれが駆逐艦の全滅、駆逐艦とレーダー艦両方の全滅、戦艦2隻差におおむね対応しています。このうち2つが失われた時点が敗北局面で、そこから遡りながら原因を分析していきます。例えば戦艦2隻差がついたなら、どこで戦艦が削られたのか、突撃の標的になっていないか、外周から敵の行動をきちんと制約できていたか、などをチェックしていきます。また、内周の突破成功も決定局面になります。
困難は分割せよ
対戦ゲームで感じるストレスが自己効力感の喪失、「自分はゲームの勝敗に影響を与えられない」という無力感に似た感覚に起因するとすれば、戦術論は勝利までの過程を細かく分割することでプレイヤーが自己効力感を取り戻すひとつの手段になり得ます。なぜ勝ったのか、なぜ負けたのかが分かるようになると、精神的にはかなり楽になります。
最後に
この記事の表現は私の感覚に最適化されていてこのままでは使いづらい箇所もあるはずなので、実戦の分析に使いながら合わないところを改めていただければと思います。私個人がソ連レーダー軽巡をメインに扱っている関係で占領妨害役に重きを置きすぎているのではないか、駆逐艦の機能に関する解説が不正確なのではないかという懸念があります。
次回の記事では「前線はいつ崩壊するか?」を中心的な問いに据えて、突撃論をさらに掘り下げる予定です。
謝辞
りばっくすさん(@RiBacx366)、珊瑚さん(@Coralsea017)のアドバイスに今回も執筆を助けていただきました。また、じーふぉーさん(@G4H4CK256)には大型巡洋艦のリプレイを提供していただき、私のレーダー巡だらけの実戦譜にバリエーションを加えることができました。ありがとうございました。