わらび餅の巡洋艦日記

おふねの戦術論と性能論についての記事です.

突撃の条件

1. 突撃の重要性

 「突撃」は戦場におけるダメージの均衡を大きく崩すポテンシャルを秘めている。ここでいう突撃とは、敵の隠蔽距離の内側まで前進しながら接近戦を行うことを指している。近距離の交戦では隠蔽に戻れない敵味方がお互いに大ダメージを与え合うだけでなく、不意を突いた瞬間火力の高い攻撃が一方的に撃沈を奪ってしまうことさえ起こりうる。このように重要度の高い突撃には失敗の値段も高く付き、突撃の判断を間違えば無償で敵に撃沈を献上してしまうことも少なくない。突撃は撃沈に直結するため、良くも悪くも戦況を大きく変えてしまう影響力がある。

 突撃の成功は撃沈だけでなく、占領優位を勝ち取るために不可欠である。このゲームの勝利条件は撃沈と陣地占領から構成されるが、突撃は撃沈だけでなく陣地占領にも貢献することができる。陣地占領のためには味方が陣地へ前進するだけでなく、敵を陣地から追い出す必要がある。占領の準備段階においても、敵を陣地周辺の重要な海域から追い出すことで味方の安全を確保しなければならない。陣地あるいは陣地周辺の海域から敵を排除するにあたっては、やはり突撃が有効である。味方の突撃が成功した局面では、味方が継続的に前進しながら敵に後退を強いることができる。

 それでは突撃が成功する条件、失敗する条件とは何なのだろうか。突撃は勝利条件と密接に関係しており、突撃を成功させる条件こそ攻撃の最終目標である。突撃を受ける側の立場から眺めれば、この条件は突撃の餌食とならないための注意点に他ならない。この記事では2章で接近突撃を阻止するための条件について考えながら、その裏返しとしての突撃の成功条件を明らかにする。

 レーダー突撃も接近突撃と同様に撃沈および占領に大きく寄与する。レーダー突撃とは、隠蔽状態にある艦艇や煙幕および島裏に隠れている艦艇に対してレーダー艦が行う突撃である。攻撃側が距離を詰めて相手から隠蔽状態を奪うという特徴は接近突撃と共通しているものの、レーダー突撃が標的としているのは低耐久かつ高隠蔽の艦艇、駆逐艦巡洋艦である。レーダー突撃は低耐久の艦艇を標的とするので撃沈に繋がりやすいうえに、高隠蔽で占領への貢献度が高い艦艇を攻撃できるため占領防衛能力にも優れる。このようなレーダー突撃を阻止する条件は3章で扱う。

 突撃を未然に防ぐために、艦艇の位置取りについてどのような点に注意すればよいのだろうか。また、突撃が敵に与える脅威を突撃以外の方法で活用することはできないだろうか。敵が突撃を防ごうとしたことで生まれた敵の配置の変化を利用して、周辺の戦場に数的優位や位置的優位を築く方法を考えたい。4章では突撃の副次的な影響である「突撃誘発」および「束縛」という概念について説明する。

2. 接近突撃の阻止

 この章では接近戦の突撃を受ける側の立場から、突撃を阻むための条件を考えたい。この条件が満たされない状況こそが突撃が決まる状況である。突撃阻止の条件を把握しておくことで、突撃の脅威に晒されている味方艦への予防策を講じたり、敵の陣形に隙を見つけて攻撃の足掛かりにしたりすることができるはずである。

図1. 接近突撃阻止の条件

2.1. 接近突撃阻止の条件

 突撃阻止にあたって第一に考慮すべきは「自力で接近戦に勝てるかどうか」であり、もし勝てるなら敵の突撃はそもそも無理攻めであり成立しない。自力では勝てない場合には「味方を頼る」か「逃げる」かのいずれかを検討する必要があるが、味方の援護を期待するにも撤退のタイミングを図るにも前方への視界が必須である。この議論をまとめると図1のように、突撃阻止の条件は「自力で接近戦に勝てること」または「前方への視界があり援護か退路があること」となる。

 言葉だけでの説明は抽象的で分かりづらいので、具体的な実戦例を踏まえながら突撃阻止の条件を満たしていないときに突撃が起こることを確認しよう。

実戦例1. 序盤の対駆逐強襲
実戦例1. 序盤の対駆逐強襲

 序盤、陣地占領が始まった直後の局面である。反対サイドは省略している。状況としてはNevskyが隠蔽状態のまま外周を上がり、敵Kitakazeをレーダー射程に捉えながらその退路を塞いだ。

 敵Kitakazeの立場で考えてみると、Nevskyに対して中近距離からでは撃ち勝てないので「前方への視界があり援護か退路があること」が突撃阻止の条件となる。Kitakazeは内寄りの針路から陣地に入ったため外周のNevskyがこれまで一度も見えていない。「前方への視界」が存在しないため、突撃阻止の条件がすでに破られている。

 いったん島裏から出て外周へ動こうとしたところで視界は取れたものの、今度はYugumoから発見を受けて、さらにNevskyに退路を塞がれていることが発覚する。退路がないとなれば援護があるかどうか、このNevskyを仕留められる味方戦艦がいるかどうかだが、開幕から内側に引っ込んでいった戦艦2隻は引き撃ち体勢のうえに距離は16 km以上離れていて抑止力にならない。

 結果として敵Kitakazeは味方Nevskyのレーダー射撃を受けて瀕死、蛇足だが味方Yugumoは魚雷で頓死した。

 実戦例を確認することで、突撃阻止の条件が少しはイメージしやすくなったはずである。ここからは突撃阻止の条件それぞれをさらに詳しく掘り下げながら、突撃の成否を決めるさまざまな要因について深く考えてみる。

2.2. 接近戦で勝てるかどうか

 接近戦での勝敗を判断するポイントは、接近戦の結果である撃沈の損得を見分けること、そして味方の得になる条件、損になる条件それぞれで撃沈が起こる可能性を予測することにある。撃沈の損得や可能性を見積もることが難しい状況は、そもそも突撃を起こすべき状況ではない。

 撃沈の損得に関しては、代償なしで敵を撃沈できた場合は文句なしで得と判断できる。お互いに撃沈が発生して交換となった場合はHPの収支や撃沈した艦艇の機能の代替可能性が損得勘定の手掛かりになる。例えばHPが残り少ない味方戦艦がHPの有り余った敵戦艦に体当たりを決めて交換になった場合、HPの収支からみて得をしている。敵の唯一の駆逐艦を撃沈できた場合、代えの利かない視界・占領機能を敵から奪ったことになるため得である。

 撃沈の確実性を左右するのは撃沈までにかかる時間である。HPの少ない艦艇が標的になった場合、あるいは一撃で敵のHPを大きく削ることができる「破壊的な攻撃」が発動した場合には、撃沈の確実性が高まる。

 「破壊的な攻撃」には大型艦の防郭弾体当たり、小型艦の肉薄雷撃があるが、そのうちの体当たりと肉薄雷撃が有効なのは2 km以下の至近距離に限られる。この接近戦の有利不利が大きく切り替わる2 kmというボーダーラインを意識することは非常に重要である。例えば独戦のソナー突撃を受けた駆逐艦は、ソナーの強制発見から主砲と副砲で仕留められてしまえば肉薄雷撃を放つことさえできない。

 また、これらの破壊的な攻撃手段を持たない艦艇、例えば魚雷を搭載しない巡洋艦駆逐艦は、至近距離の接近戦に対して極めて脆弱である。煙幕とレーダー、ソナーを兼ね備えた英巡Belfastは優秀な対駆逐能力を持つ一方で、魚雷を搭載していないため敵戦艦に突撃を受けた際にはまったく抵抗できない。

2.3. 前方への視界があるかどうか

 接近戦で勝てない場合、次に確認するべきは前方への視界、「敵の接近を察知・監視する」ための視界の有無である。視界は援護・撤退いずれを選択しても必要になる。視界がなければ撤退のタイミングを判断できないし、味方の援護も空回りする。

 駆逐艦は島裏に入るタイミング、煙幕に籠もるタイミングに十分注意する必要がある。駆逐艦の前方に駆逐艦はいないため、自身が視線を切ってしまうとそのまま前方への視界がなくなる。

 駆逐艦および空母以外の視界手段としてはレーダーソナーがあるが、いずれも視界機能として不完全である。レーダーは探知時間が有限なため低HP目標、例えば駆逐艦や瀕死の敵艦の突撃しか防ぐことができない。ソナーは探知距離が短いため、突撃阻止側にとっては敵を発見した時点で手遅れになっていることが多い。また、煙幕に籠もっている巡洋艦はソナーで敵を見つけても煙幕内発砲発見で自分が見つかってしまうため撃てない、という場合が頻発する。

2.4. 十分な援護があるかどうか

 視界がある場合の手段その1、味方の援護である。「接近戦が始まった時点で優位に立てるまで敵を削れるかどうか」を確認する。具体的な観点は3つ、味方の火力敵との間合い視界の継続性である。

 味方の火力とは敵を削るスピード、時間あたりのダメージであり、この速度に攻撃時間を掛け算することで最終的な与ダメージになる。敵との間合いが遠いほど敵が突っ込んでくるまでに時間的な余裕があるし、視界が継続的に確保できていれば味方は最大の効率で火力を発揮することができる。

 敵の突撃を止められないなら援護が不十分なので、もうひとつの選択肢である撤退を検討しなければならない。

2.5. 退路があるかどうか

 視界がある場合の手段その2、撤退である。隠蔽距離内に敵がいないことが明らかな場合、あるいは撤退時に敵の視線を切れる場合は、状況が悪化しないうちに早逃げすればよい。

 問題はすでに隠蔽距離内に敵が侵入している場合だが、ここでは姿勢が後ろ向きかどうか、前向きであれば安全に奥転舵できるかどうかが死活問題である。戦艦や巡洋艦は奥転舵のタイミングで敵APにバイタルを抜かれるリスクがあるし、駆逐艦もやはりそのタイミングで集中的に被弾する。転舵で姿勢を反転させるための1分間で敵との距離が5 km詰まるので、これもまた退路が残っているように見えて手遅れになりがちな原因のひとつになる。

3. レーダー突撃の阻止

 レーダー突撃は敵駆逐艦および煙幕・島裏巡洋艦の撃沈と陣地防衛に重要な役割を果たす。この章ではレーダー突撃の意義について説明したのち、レーダー突撃への対策を議論する。

3.1. レーダー突撃の意義

 大型艦は「撃沈までの時間を稼ぐ」ことで接近突撃を阻止する。豊富なHPで敵の攻撃を凌ぎながら、反撃の機会や味方の援護を待つのである。瞬間火力の高い至近距離の破壊的な攻撃が弱点であり、そしてHPが残り少なくなると突撃を阻止できなくなる。

 それに対して、小型艦は「接近戦が始まるまでの時間を稼ぐ」ことで接近突撃を阻止する。駆逐艦は大型艦よりも隠蔽性に優れるため、接近してくる敵艦をスポットしながら撤退か味方の援護かを選ぶことができる。このときに隠蔽雷撃で反撃することも可能である。煙幕や島裏に隠れた巡洋艦も、視線を遮断することで隠蔽状態を保っている。この場合は視界を他艦に依存することになるものの、本来であれば被ダメージのほうが高く攻撃できない状況でも一方的に攻撃できる利点がある。

 小型艦のもうひとつの阻止手段は「肉薄雷撃」である。敵が小型艦を発見するには近距離まで接近する必要があるが、このとき敵は肉薄雷撃を受けるまでの距離的な余裕がほとんどない。瞬間火力が極めて高い肉薄雷撃は接近戦を挑む敵への抑止力として働く。

 それでは、小型艦の突撃阻止の手段を丸ごと奪う方法はないだろうか。小型艦の隠蔽距離まで近づかずに隠蔽を剥がすことができれば、隠蔽距離の差も肉薄雷撃の脅威も気にならない。煙幕や島裏に隠れて一方的に撃ってくる敵巡洋艦をスポットできれば、敵は一転して危険な状況に陥る。これこそレーダーの存在意義に他ならない。

 レーダー突撃の役割は、敵駆逐艦および煙幕・島裏巡洋艦の撃沈と陣地防衛である。駆逐艦や煙幕・島裏まで接近することなく敵を発見できるレーダーは、肉薄雷撃などのリスクを低く抑えることができる。煙幕や島裏で停止している巡洋艦は回避能力が低下しているため、攻撃に対して脆弱になっている。レーダー突撃は低耐久の艦艇を標的とするので撃沈への寄与が大きく、しかも高隠蔽の艦艇に脅威を与えることができるため陣地防衛能力にも優れている。

 この章では一撃離脱のレーダー突撃を扱う。低耐久の艦艇を標的にできるレーダー突撃のほうが、接近突撃よりも「接近戦に勝つ」という条件を簡単に満たすことができる。レーダー突撃と接近突撃の条件を同時に満たした状況ではレーダー突撃に離脱の必要がないことになるが、それはもはや接近突撃の一種なので2章の内容で分析できる。接近突撃の条件を満たしていない状況では、レーダーの有効時間を終えたレーダー艦は敵の大型艦から離れて離脱する必要がある。この章ではまだ分析していない一撃離脱のレーダー突撃を扱うことにする。

3.2. レーダー突撃の阻止

 レーダー艦はまず標的へ接近して、次に標的をレーダーで捕捉して攻撃を行い、そして敵から離脱する。この3段階それぞれに対して対策を考えてみる。

接近
 レーダー艦にとって最も危険なのはこの接近の段階であり、敵のスポットを受けながら敵戦艦のAP射線に睨まれると退路を断たれてしまう。したがって、視界役と戦艦が同時に存在する状況はレーダー突撃の阻止に極めて有効である。スポット役が空母や大型艦であればレーダー艦は自力で隠蔽に戻る術がない一方で、駆逐艦のスポットはレーダーで追い払える可能性がある。いわゆる隠蔽レーダー、レーダー射程がレーダー艦の隠蔽距離を上回っている艦艇の強みは、自身をスポットした敵駆逐艦を確実に捕捉できること、自力で隠蔽に戻れる方法を備えていることにある。

捕捉
 捕捉段階の対応策としてはまず「レーダー艦への反撃」があるが、この内容は①接近と重複する。ここではもうひとつの対応策、「レーダー艦の攻撃を受け流す・攻撃から逃げる」ことについて考えたい。レーダー艦の影響力は駆逐艦への命中弾巡洋艦への防郭弾であるから、駆逐艦は敵弾を回避できればまったく問題ないし、実際に撃ってきているのがレーダー艦1隻のみの場合はスポットを切らなくても前後進だけで回避できることがある。とりわけ対駆逐火力がさほど高くないソ連重巡大巡が相手の場合に顕著である。

 レーダーで捕捉された駆逐艦巡洋艦は後ろ向きの姿勢であれば素早く逃げることができる。奥転舵しなければ逃げられない状況は危険であり、煙幕や島裏で停止している状況からでは動き出しが遅いのでなおさらである。他の対策として巡洋艦は防郭を守るためにあらかじめ防御姿勢を取っておくとよいが、全門斉射が妨げられれば自身の火力が低下しかねないので難しいところである。

 レーダー突撃で攻める側からすると、煙幕・島裏巡洋艦が奥転舵するまでの間にどれだけダメージを集中的に与えられるかが鍵である。あらかじめ砲を向けていた味方戦艦がAPで敵の煙幕巡洋艦の防郭を撃ち抜いてくれるのは非常に心強い。撃つ相手がおらず暇そうにしている味方艦が多くいるタイミングでレーダー突撃を行うと、このような集中砲火が決まりやすい。

離脱
 離脱時の奥転舵をやはり戦艦が撃ち抜くことができれば、結果としてレーダー突撃に対する抑止力として機能するはずである。しかしながらこの後手を踏んだ反撃は突撃阻止側にとってあまり頼りにならない。むしろレーダー艦がこの罠に引っ掛からないよう注意すべきと言えるだろう。レーダー突撃の際には「反対サイドの敵戦艦の射線」に要警戒であり、離脱路の横を撃ち抜こうとする敵戦艦の存在は危険性が高いのに見落としがちである。

実戦例2. 煙幕巡に対するレーダー突撃
実戦例2. 煙幕巡に対するレーダー突撃

 序盤、Nevskyのいる右側のサイドでは敵味方の駆逐艦がともに後退して砲戦が休止状態にあった。説明の都合で反対サイドも図示している。

 敵Neptuneは煙幕を使用したものの、敵の視界役である駆逐艦は遠く離れているうえに敵空母の艦載機も攻撃を終えたタイミングで視界が切れていた。味方Nevskyは敵ZaoとJohan de Wittに反撃を受けないタイミングを見計らってレーダー突撃を決め、射撃目標がなく手持ち無沙汰だったこちらのサイドの味方が敵Neptuneに集中砲火を浴びせて撃沈を奪った。

 レーダー突撃を終えたNevskyはB陣地(中央)に向かって離脱するときに反対サイドの敵Schlieffenの射線が気になる。しかしながら敵SchlieffenはHPが半分以下であったうえに味方の空母とDes Moinesから攻撃を受けたため島裏に隠れ、安全にB陣地に留まることができたNevskyには陣地占領のおまけがついてきた。

4. 突撃の副次的な影響

 この章では突撃がまだ明確には起こらない段階、突撃阻止条件が部分的にのみ満たされている状況について考える。突撃が与える潜在的な脅威は「突撃誘発」および「束縛」というメカニズムを通じて他の優位へ変換することができる。また、「突撃誘発」は突撃阻止側が艦艇の位置取りを決める際の指針になる。

4.1. 突撃誘発

 艦艇がそこにいることでかえって敵の突撃を呼び込むことがある。「接近戦で不利な艦艇が退路を断たれる」と突撃阻止の手段を他の味方艦の視界や援護に依存することになってしまい、この他者依存的な条件が満たされなくなったタイミングで敵の突撃に狙われる。敵との距離を詰めることが必ずしも敵の攻撃を遅らせるとは限らず、むしろ敵の攻撃を助長することすらあるのである。突撃を誘発しかねない艦を他の味方艦も放っておくわけにはいかず、これが「突撃誘発」と表裏一体の「束縛」という概念につながる。

4.2. 束縛

 突撃阻止を味方の援護に依存している場合、味方火力艦の位置取りに制約がかかる。例えば敵駆逐艦が占領をしている状況で、レーダー艦は敵戦艦からの射線が切れたタイミングを見計らって陣地に一撃離脱のレーダー突撃を決めることができる。この状況で敵戦艦は本来であれば陣地への射線を切ってはいけなかったはずである。これが突撃の脅威が敵の行動に制約を与える例である。

 もうひとつ、突撃阻止を味方の視界に依存している場合にも味方視界艦の行動に制約がかかる。例えば煙幕巡洋艦が陣地から遠く離れた外周で煙幕を使用した場合、味方駆逐艦は外周で視界を取り続けるか、外周の視界を諦めて陣地を踏みに行くかの選択を強いられる。それに対して煙幕巡洋艦が陣地近くで煙幕を使用した場合、駆逐艦は占領役と視界役を兼ねつつ味方煙幕巡洋艦の強力な援護を頼ることができる。こちらの場合は視界役という制約が駆逐艦にとって負担にならない。

 退路を断たれたうえに突撃の脅威に晒されている味方艦が存在すると、好きなタイミングで突っ込んでくる敵艦を阻止するために他の味方艦が継続的に束縛されてしまう。位置取りの自由度の減少と機能性の低下が起こることで、「束縛」は周辺海域における数的あるいは位置的な不利に波及する危険性がある。この厄介な束縛を回避するためには、突撃を受けるリスクのある艦艇が退路を残して、味方の配置の変化に対応しながら位置取りをいつでもやり直せるようにしておく必要がある。

実戦例3. 無謀な前進
実戦例3. 無謀な前進

 中盤初め、味方が陣地を押さえたところで敵ShikishimaがC10の島を超えて外周から仕掛けてきた局面。反対サイドは省略している。

 敵Shikishimaは友軍を島よりも後ろに置いてきてしまったため援護がなく、そのうえ味方Schlieffenの射線に晒されて退路を断たれている。味方SchlieffenのほうはSmolenskやKremlinなど豪華な援護を備えており、火力の差は圧倒的である。「接近戦で勝てない」うえに「援護も退路もない」ので、突撃阻止の条件はやはり破られている。敵Shikishimaは敵を押し込むどころか、かえって相手の突撃を誘発して攻撃の起点にされてしまった。

 このとき敵駆逐艦は中央のB陣地へ移動していたため、敵は外周の味方が見えていなかった。敵Shikishimaは視界がないので接近戦の判断を誤り、撤退のタイミングを見失ったとも考えられる。

 結果的に敵Shikishimaの撃沈が引き金となり、戦艦の枚数で優位に立った味方のSchlieffenとKremlinが勢いそのままC側を突破して敵を奥深くまで押し込んだ。

謝辞

 執筆にあたって様々な方にアドバイスをお願いしました。ご協力ありがとうございました。